ヘッドハンターが欲しがる人材 年収2000万円の条件とは?

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ヘッドハンターが欲しがる人材 年収2000万円の条件

日本の名門企業でもヘッドハンティングで、「プロ経営者」などの経営人材を求めるケースが増えている。どのような人材がスカウトの対象となり、年収はどう決まるのか。転職後に成果を上げる人材とはどんなタイプなのか。LIXIL(リクシル)グループ社長の瀬戸欣哉氏など数々のヘッドハンティングを手掛けた、縄文アソシエイツ(東京・港)の古田英明代表取締役に聞いた。

名門企業、外部から企画担当常務

「今、日本の名門企業で純血主義が崩れようとしている」。日本有数のヘッドハンターとして知られる古田氏はこう話す。続いて「社名は言えませんが、ある大手メーカーのトップから企画担当常務を外部からスカウトしてきてほしいという依頼が来ました。東京大学など一流大学出身者ばかりの名門企業で役員はそれまで生え抜きが占めていました。企画や人事は会社の要、それを外の人に委ねたいというのです」という。

ぜ外部に人材を求めるのか。「年率3%程度の成長を描く中期経営計画を作成できる人材は内部にいくらでもいる。しかし、2020年以降、それで乗り切れるのか。会社を変えられるような、革新的な事業計画を考えられる人材はいないのか、そういう経営者の危機感からの要請だった」という。早速、縄文アソシエイツは動いた。「うちには経営人材候補のデータベースは1万~2万人分はありますかね。実際は付き合いのある人からどんどん紹介してもらうやり方ですが、まず100人程度をリストアップして選択し、さらに候補者を絞って、実際に接触していく」という。

当然、ヘッドハンティング会社は公に候補者と会うことはできないので、ホテルなどで接触する。最終的に顧客企業と面接してもらうのは3~5人。面接はオーナー企業の場合、一度で即決されることもあるが、2~3回が平均だという。しかし、「どんなにその会社でエリートで、有能な人材でも転職先で力を発揮できるのは、5分の1以下ですね」と古田氏は語る。

わかりやすく話す人

ではどんな人材が転職後も高い実績を上げられるのか。どのようにして古田氏は人材を見抜くのか。

「長年の経験とカンですね。だけどいくつかのポイントはあります。仕事の本質を素人にもわかりやすく話せる人は、転職先でも部下をうまく使いこなせます。その会社独自の難しい言葉や用語で話す人は、ほかの会社では使えないでしょ。簡単にわかりやすく話せる人は1ランク上です。候補者の本性を見抜くため、私は相手と話すときにあえて怒らせたりすることもあります。あと、その人の子供時代の話も大事ですね。どういう環境で育ったのか。どんなキャリアを歩んだのかつぶさに調べます」という。

縄文アソシエイツが手掛けるヘッドハンティングの件数は年間100~150件。転職先での平均の年収ベースだと、2000万円前後になるという。「年収が決まるのは最後の最後ですね。例えば、顧客企業側から年収2000万円ぐらいで探してほしいと言われて、相手側の人材がそちらのポストでこんな新規事業を立ち上げ、これほどの実績を上げられると、コミットメントします、という場合は、顧客企業は年収をもっと増やすとか、最初の1年は2000万円だけど、成果を出せば役職を引き上げて3000万円にするから来てほしいとか、そんな交渉の後で年収が決まりますね」(古田氏)という。

2代連続 リクシル社長をスカウト

ヘッドハンターは黒子的な存在。実例を話すのはタブーだが、リクシルグループ社長だった藤森義明氏、現在社長の瀬戸欣哉氏と2代続けてのヘッドハンティングを手掛けたのは古田氏だ、というのは業界では有名な話だ。取締役会議長の潮田洋一郎氏の要請だった。同氏はリクシルの前身の一つであるトステム創業家出身で、グループのオーナー的な存在だ。

「特別に許可をいただいて、この件については答えるようにしています。M&A(合併・買収)を通じて巨大な企業グループを形成しようと考えていたので、当時、米ゼネラル・エレクトリック(GE)で活躍していた藤森さんに白羽の矢を立てた」という。東大アメリカンフットボール部出身、日商岩井(現双日)に入社後、GEなどを経て頭角を現していた。

藤森さんはとにかく腕力がある。彼なら会社を大きくできる」として潮田氏に紹介した。社長就任後に藤森氏は、国内外でM&Aを次々断行し、連結売上高で1兆7千億円規模の企業になった。一方で買収した海外企業で不正会計問題が発覚。突如の退任劇を迎えた。「ただ、藤森氏は当初のミッションを果たしたと思っています。潮田さんと一緒にとにかく5年間はがんばってグループを大きくしてほしいとお願いしましたが、その通りに成長しましたから」という。実際、潮田氏は次期社長のヘッドハンティング業務も古田氏の縄文アソシエイツに委ねた。

目を付けたのはインターネットを活用して工具を通販するMonotaRO(モノタロウ)を起業した瀬戸氏だ。住友商事出身で、11社の会社を立ち上げたことで知られる。「実は瀬戸さんは住商の課長クラスの時から知っています。藤森さんとは全く別のタイプ。何事にも自ら関与するハンズオンタイプのリーダーです。成長したグループをうまく整理統合していくのが役割です」という。

玉塚氏とも長年の付き合い

名門の大手企業に、プロ経営者としてヘッドハンティングされる人材は相次いでいる。ローソン会長を退任した玉塚元一氏は、もともと旭硝子の出身。「ユニクロ」を展開するファーストリテイリング社長、ローソン社長、会長を経て次はIT(情報技術)企業のハーツユナイテッドグループ社長に就任する。玉塚氏の親友で、盟友関係にあったファミリーマート社長の沢田貴司氏もそうだ。伊藤忠商事出身でファーストリテイリング副社長などを経験した。4月にパナソニック専務役員に就任した日本マイクロソフト前会長の樋口泰行氏は、パナソニックの前身である松下電器産業の出身。日本ヒューレット・パッカード社長などを経て出身母体に戻った格好だ。

古田氏は「玉塚さんの案件はウチには関係ないけど、彼はナイスガイですよ」と話す。プロ経営者といわれる人とは、以前からつきあいがある場合が多いという。ヘッドハンターの資産は人脈力だ。

最後にヘッドハンティングされて成果を上げる人材に共通する資質について聞いた。「一言でいうと、向上心のある人。これは決して野心がある人ではない。『このままじゃ自分はダメだ』と思って、新たな舞台に立つという気概を持っている人。転職先で求められるのはいずれも難しい役割で、マイナス局面になる場合も多いが、これを謙虚にやり遂げ、成長させたいと願う人材だ」。変革期を迎えている日本企業。ヘッドハンターが活躍する舞台はさらに広がりそうだ。

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